私のナラティブ 私自身の物語を紡ぐということ。 それはどういうことなのだろうか、と思う。 どんな意味を持ち、現実の世界とどのように切り結んでいるのだろうか。 廣野由美子著「シンデレラはどこへ行ったのか―少女小説と『ジェイン・エア』」を読みながら これだけ多くの「少女小説」が、逆境にあるなしにかかわらず少女たちを励まし鼓舞する… コメント:0 2024年07月16日 エッセイ 読書 物語 続きを読むread more
自衛隊もまた靖国というナラティブを必要とするのか 世界8月号より 私にもナラティブが必要だ。 術後の不調等々、困難を乗り越えるために「ナラティブ」というメソッドが有効に思われていた時 「世界8月号」の記事に、タイトルの書評が目に留まった。 「ナラティブ」を自衛隊と靖国神社の関係を表すキーワードに使っている。 主に精神医療面で使われる場合に着目していたのだが、歴史学の上でも「… コメント:0 2024年07月10日 政治 歴史 宗教 続きを読むread more
医師との付き合い方 もうあの先生から引き出せることはないのではないか、というのが友人の意見だった。 術後の仕上がりが思わしくなく、何度か手紙まで書いて苦境を訴えたけれど、明快な答えは返ってこなかった。 昨日はその執刀医の診察予約が入っていた。 多忙な医師の限られた診療時間内に、質問事項を要領よく聞きたださねばならない。 医師の専門分野、プライド… コメント:0 2024年07月06日 エッセイ 続きを読むread more
手術とリハビリ 「自分との闘いです」 と、リハビリの指導を受けている柔道整復師が言う。 手垢のついた言葉は、あまりに当たり前すぎて、虚しい。 この世に生きるだれでもが、意識すると意識しないとにかかわらず、日々「自分との闘い」に明け暮れているのだから。 術後、3年と2か月が経つが、リハビリの成果がみられない。 セカンド・オピニオンを求めて、… コメント:0 2024年07月01日 エッセイ 続きを読むread more
木曜の男 G.K.チェスタトン 吉田健一・訳 「木曜の男」を読んだ。 推理小説作家として知られるG.K.チェスタトンだが、唯一の長編推理小説とされる。 チェスタトンは、評論、小説、戯曲、詩、紀行、神学論、歴史などにわたる守備範囲の広い作家であり、推理小説はその一部に過ぎない。 そもそも小説をジャンルわけすること自体、無意味に思われる作品だった。 しかし、江戸… コメント:0 2024年06月20日 読書 エッセイ 続きを読むread more
井上清子さんのこと 朝ドラの「虎に翼」を見るたびに、井上清子(せいこ)さんのことを思い出す。 井上清子先生と言うべきかもしれない。 たった3か月の短いお付き合いだったけれど。 大学卒業にあたって、就職先を探していた私は、希望の外資系製薬会社への就職を断念し、 弁理士事務所への方向転換を考えていた。 名前から女性であることは分かっていた。 … コメント:0 2024年06月13日 続きを読むread more
ホームでの上映会 ホームでは毎日、上映会が開かれる。 一か月ごとのプログラムがリーフレットで配られるので、観たい作品はチェックしておく。 5月26日は、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002) スティーブン・スピルバーグによるコメディで、ご覧になった方も多いだろう。 フランク・W・アバグネイル・Jrという、実在する詐欺師… コメント:0 2024年06月02日 続きを読むread more
ミステリーの人間学 これから一体何を信じて生きていけばよいのだろう・・・? 10代の若者を襲う困惑でも社会人一年生の戸惑いでもない。 これが初老の女の嘆きなのだから、さまにならない。 意地でも生き抜く気構えを示さなければならない時に、青臭い絶望感に取りつかれる。 ほんと!残りの人生に、わずかでも意味を見出そうとすれば、たちまち青… コメント:0 2024年05月25日 続きを読むread more
ミステリに魅せられて 世界推理短編傑作集6 「世界推理短編傑作集6」は、江戸川乱歩編の5巻に戸川安宣が加えた補遺としての最終巻である。 巻末の解説に、新訳が次々に登場するかげに、名訳が姿を消すのを惜しむ気持ちが述べられている。 訳者に対するリスペクトを表明した拾遺と言えよう。 時代の流れのなかで、新訳によって旧作が生まれ変わる。 作者はもちろんのことだ… コメント:0 2024年05月20日 続きを読むread more
「ALS嘱託殺人」と隠蔽されたもうひとつの事件 本記事を世界5月号と6月号誌上で読んだ。 「ALS嘱託殺人」は2019年11月に起きた事件で、当時大きな反響を呼んだ。 ALSという難病の酷さを知れば、それに同情する医師の犯行も善意と捉えられ兼ねない。 賛否両論あるだろう。 本記事は2024年3月に下された京都地裁判決を受けて書かれたものである。 医師… コメント:0 2024年05月17日 続きを読むread more
レベッカとは誰か? 女は決して自分の自然な姿を見せない。なぜならば女は、自然から生みつけられたままでも、きっと人から好かれるものだ、というふうに考えることのできる男ほどのうぬぼれがないからである。 ゲーテの言葉である。 うぬぼれがない、というより、今の言い方をすれば、自己肯定感の低さということになろうか。 しかし、この男女の違いを… コメント:0 2024年05月14日 続きを読むread more
オリーブオイル・セミナー 週末に新緑フェスティバルと題して、コンサート、セミナーが開かれました。 ロビーの各ブースでは、花やドーナツ、革小物などの販売もあり 入居者のご家族や近隣の方たちも楽しまれていたようです。 11日、土曜日には、「異邦人」のヒットをとばした、久米小百合さんが来て、オリーブオイルについての講演が行われました。 久保… コメント:0 2024年05月13日 続きを読むread more
「紅麴」サプリ事件の深層 を読んで 世界6月号より (サプリも)少し整理しなくちゃ と言うくらい、その人はずいぶんたくさんのサプリメントを飲んでいたようだ。 いかにも効きそうなキャッチコピーや体験談が、テレビなどのメディアにあふれんばかりに紹介される。 ついこの間、紅麹由来のサプリメントによるものと思われる健康被害がニュースになった。 まだ因果関係は明らかにな… コメント:0 2024年05月10日 続きを読むread more
事実と虚構の間 世界推理短編傑作集5 事実は小説より奇なり、というがさらに穿っていうと、事実は小説より冷酷だ、というべきだろう。 事実は悲劇に対して哀悼も捧げない。 ワールドニュースの切り取られた映像からでも十分それが分かる。 フィクションの世界は、最初から嘘と分かっているので罪がない。 推理小説の世界にたとえバイオレンスがさく裂していようと、こ… コメント:0 2024年05月05日 続きを読むread more
パサージュ論を読みながら19世紀末のパリを散歩する 本シリーズは、草稿のままに終わっており、引用の合間に著者自身の随想がちりばめられた、断想のモザイクのようなノートである。 引用は膨大で、探索していると、当時の交通などについて驚くような記述も散見され、時代相があらわになる。 パサージュの一言で、19世紀末の都市における、街路の目覚ましい発展と、それを促し、変容する… コメント:0 2024年04月30日 続きを読むread more
佐藤愛子がレポートした大阪万博1970 老年を描く、といえば武田泰淳の「目まいのする散歩」を思い出す。 もうすっかり忘れているのは、若い時に読んだせいだろう。 吉田兼好が、若い人、病なく身強き人を「友とするに悪きもの」として挙げている。 若い人、頑健な人は、溌溂としていて、友とするにも心強いはずだ。 それが物足りない、と感じるのは、年のせいだろう。 老いを経験しては… コメント:0 2024年04月24日 続きを読むread more
となりのトトロの病院へ 近況報告を兼ねて 東村山の白十字病院に行く。 通いなれた病院だが、現住所からはあまりに遠いので、病院を変える算段をした。 これでしばらくはこの病院とも縁遠くなるのだろうか。 R子さんが、迎えに来てくれる。 若葉のやわらかな緑と樹々の花々が新しく開通した道の背景を彩っている。 街路樹のハナミズキの白い花が目に眩しい。 八重桜のピンク、ツツジ… コメント:0 2024年04月21日 続きを読むread more
推理小説にもどってゆく 世界推理短編傑作集1 推理小説がなければ、世の中味気ないものだろうと思う。 娯楽であり、逃避先である。 自嘲的にいえば、何の役にも立たない読書であり、あるいはそれだからこそ甘い蜜の誘惑に満ちている。 本アンソロジーは、東京創元社が推理小説の分野に乗り出したときに、「世界推理小説全集」の短編部分を独立させて刊行したものである。 すで… コメント:0 2024年04月18日 続きを読むread more
続・セカンドオピニオンを求めて (リハビリとして、一日)1時間バックウォークすべし。 これが日産厚生会玉川病院股関節センターのM先生の言葉だった。 外歩きもやっと、という患者にとってこれは酷、というより不可能だ。 セカンドオピニオンを求めて、股関節の手術を年間740例実施しているという玉川病院を訪れた日のことだった。 今回は再診である。 手術した多摩総合… コメント:0 2024年04月16日 続きを読むread more
知恵ある友 老人ホームの仲間たち 小規模の老人ホームで(実はこの言葉には抵抗がある)、個性的かつ思いやりに溢れた高齢者たちに出会った。 私ばかりでなく、その出会いを「勉強になった」ともらす人は少なくない。 人生経験をたくさん積んだ人がなお、他人から学ぼうとする心の余裕に打たれる。 昨日は「街道探索」というセミナーが開かれた。 座談の中心である講師… コメント:0 2024年03月31日 続きを読むread more
「日本独立」を観て ホームの上映会で2020年公開された邦画「日本独立」を観る。 数日前に「ハリーポッター秘密の部屋」を観て、もはやファンタジーに感情移入できなくなっている自分に気づき、いくらか悲哀を覚えたのだったが 言い尽くされた感のある敗戦後のどさくさを今現在どのようにとらえているのか。 GHQによる憲法改正問題が本映画の骨子であ… コメント:2 2024年03月27日 続きを読むread more
短編の味わい 江戸川乱歩編「世界推理短編傑作集」 ヴァン・ダイン、ドロシー・L・セイヤーズ、エラリー・クインがそれぞれ編んだ三つのアンソロジーを底本に、江戸川乱歩が再編集したという秀作ぞろいの本アンソロジーが面白くないはずがない。 ましてや推理小説、ましてや短編。 社会派の松本清張は、推理小説は筋に矛盾を生じさせてはいけないので、執筆にも取材にも時間が要る。ふつ… コメント:0 2024年03月26日 続きを読むread more
本格派を読む 「Xの悲劇」 推理小説の古典、エラリー・クイン作の「Xの悲劇」を再読する。 海外では「Xの悲劇」の方に人気があるのに、なぜか日本では「Yの悲劇」がベスト100などで高位につける。 いずれも聴覚を失って引退したシェイクスピア俳優ドルリー・レーンが非公式の刑事、探偵役である。 ホームズ同様、キャラクターの魅力が本シリーズの最大の… コメント:0 2024年03月19日 続きを読むread more
読書メモ 近況報告を兼ねて フランス大革命前夜のパリ 夜のパリを彷徨しつつ、遭遇する事件、街角で交わされる言葉、…etc.不穏な空気をルポルタージュしている。 必ずしもドキュメンタリーばかりとは言えないようだが、歴史の描写には多様な方法があることを改めて感じさせる。 18世紀とは、ヨーロッパを成立させる条件がほぼ出そろった時代だと、確か吉田健一(… コメント:0 2024年03月14日 続きを読むread more
セカンドオピニオンを求めて 股関節の人工関節の再置換手術を受け、すでに2年9か月が経った。 リハビリ入院中のPTは術後1年も経たぬうちに、のびしろはあまりないだろう、と予測していたし、現在指導を受けている柔道整復師も、目指すは(せいぜい)現状維持と言う。 執刀医は新しい股関節に慣れるしかない、の一点張りだ。 行き詰った私は、セカンドオピニオンを求めること… コメント:0 2024年02月03日 続きを読むread more
コオーディネイトトレーニング 徳島大学の荒木秀夫名誉教授による「コオーディネイショントレーニング」の講座が開かれ、その概要と実践のレクチャーがありました。 老人ホームでの講演とあって、高齢になってもまだ運動神経は鍛えることができるのだ、とエビデンスに基づく見解が紹介されました。 加齢にともない、フレイル、サルコペニア、骨粗しょう症など、身体能力も後退一方だと… コメント:0 2024年01月31日 続きを読むread more
天使のゲーム 4部作のうちの第二部にあたる、「風の影」に続くカルロス・ルイス・サフォンの長編小説である。 「風の影」の圧倒的面白さは、錯綜したメタノベルの構成にあった。 本という形式を愛する読者は無意識のうちに期待している。 迷宮にも似た書物世界へ誘われ、たった一つの物語に遭遇することを。 論理的に述べられないことは物語… コメント:0 2024年01月28日 続きを読むread more
老人ホームの心やさしい仲間たち 密かに心の中でムイシュキン公爵とお呼びしている入居者がいる。 朝食後、ダイニングのソファでくつろいでいるところ、お母さまのご容態をお尋ねした。 目をぱちくりさせる以外は、ほとんど表情も変えられずに 死んだの。〇月〇日に。 と、ついこの間の日付をおっしゃった。 歳が歳だけに驚くに当たらない、とわかってはいたが、やはり絶句… … コメント:0 2024年01月27日 続きを読むread more
SHERLOCK / シャーロック 忌まわしき花嫁 BBC制作のドラマ『SHERLOCK』に特別映像を加えて再編集し、2016年に劇場公開された映画。 ジェレミー・ブレット主演のシャーロック・ホームズは、あくまで原作に忠実であることにこだわったシリーズだった。 ジェレミーのホームズは決定版とされた。 『シャーロック』の方は大胆に翻案された作品で、ジェレミー・ブレットとカ… コメント:0 2024年01月21日 続きを読むread more
シュテファン・ツヴァイク著「バルザック」を読む シュテファン・ツヴァイク著「バルザック」を読む。 マリー・アントワネット、メアリー・ステュアート、ジョセフ・フーシェなどの評伝で有名なシュテファン・ツヴァイク。 読み始めた時は、以前読んだものと文体が異なるような印象を受けた。 手もとに今、他の著作がないので正確なことは言えないが、「バルザック」は非常な饒舌体で書かれて… コメント:0 2024年01月20日 続きを読むread more