患者の孤独 医師の孤独

手術結果が思わしくなく悶々としていたところ、打開策を探るため、他院のセカンド・オピニオンを求めることにした。
セカンド・オピニオンについては、すでに手術は済んでいるので、有効な治療なりアドバイスが受けられるものか、あまり期待できないような気もしていた。
執刀医のプライドを損ねることなくスムーズに応じてもらえるかどうかも心配だった。

急性期の疾患を扱い、高度医療を担う病院ということでB病院を紹介されて、手術を受け、すでに3年3か月が経っている。
紹介元のA病院のH先生に相談すると、「あそこは股関節の専門だから大丈夫だよ」と、これからセカンド・オピニオンのために受診できればと考えていたC病院について評価していた。

私は情報開示請求を行うため、友人の手も借りて、何度かB病院に足を運んだ。
医事課では、当院は積極的にセカンド・オピニオンを勧めていますから、と原則論を主張するので、正式な紹介状ということで、診療情報提供書を頂くことにした。

ここまで請求書や資料の不備があったため、だいぶ時間がかかったが
ようやくC病院の、股関節センターのM先生の診察を受けるまでにこぎつけた。
予約をとるだけでも何か月も待たねばならなかった。

最初はこの手術が必要だったかどうか首をひねっていたM先生も、画像データをみて得心がいったようだ。
私は、紹介状の内容をすべて把握していたわけではない。
(紹介状の中身を知りたい人は、コピーなどもらえるようだから、聞いてみるとよい)

診療情報提供書ははじめ用意できるまで3週間以上かかると言われていたが、こちらの方は予想以上に早く連絡があった。
股関節センターのM先生からは、すぐに再手術しなければという状態ではないので、脚長差を1センチ弱の足底板で調整し、1日1時間のバックウォークをすすめられた。

この診察結果を踏まえ、B病院の執刀医の定期健診を受けたのが3週間ほど前のことになる。
付き添ってくれていた友人は
「あの先生から引き出せることはもうないんじゃないかしら」と言う。
私も彼女の意見を聞いて、ひとまず執刀医の病院をはなれ、かかりつけ医をC病院に変えようと決心した。
(高度医療に特化したB病院には、かかりつけ医の機能はない)

「手術後3年と2か月たつのですが…」
と申し上げると、すぐに
「そうだね」とおっしゃる執刀医に
どこかほっとした表情がみられた。
他院の股関節センターを受診したことにこだわりはないようだった。
医師も同業者の意見が聞きたかったのではないか、と思う。

患者は、だれにも相談できず、孤立無援のなかで孤独を感じていたが
実は執刀医も同じだった、と推測する。
患者には今後の人生がかかっているが、医師にも医師生命がかかっているのだ。
難しい手術に対して、何度か不安をもらされたことがあった。
実はその時手術を断ればよかったのだと、3年余りの間、ことある度に虚しい後悔が過りもした。

結果的にセカンド・オピニオンは専門家どうしの情報共有につながり、医療の質の向上に寄与すると思う。
執刀医は手術の技量に優れ、私は全面的に信頼していたのだ。
今回の難易度の高い手術に対しても、まだ経験していない手技がふくまれる、と正直におっしゃっていた。

たとえ他の医者に手術してもらっても、これ以上の結果は得られなかったかもしれない。

柔道整復師は「自分とのたたかいだ」と言うし
執刀医は「この関節に慣れるしかない」
セカンド・オピニオンでは、毎日1時間のバックウォークを!と。
(整形外科は体育会系だ)
現状を受け入れ、前向きにいくしかない。


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コロナ前に訪れた「ところざわのゆり園」 
再びこの丘陵地を歩けますように!

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