ニューヨーク・スケッチブック

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短篇の味わいを十分に堪能させてくれる一冊。
秋の夜長に最適な…

ニューヨークはマンハッタン 都会に生きる、あるいはうごめくと言ってもよいかもしれない。
群像劇を見ているような趣
6ページほどの短篇が、タイトルなしに35篇。
最後の35篇目は山田洋次を触発して映画作品「幸福の黄色いハンカチ」となったコラムで、日本版の本書に特別加えられたものである。

作品はその風土を反映して、読者は常に、グリニッジ・ヴィレッジ、5番街、セントラル・パーク、プラザ・ホテルなどの名に想像をかきたてられて、人物をその背景に有機的に融合させる。
映画でしか見たことのないセントラル・パークの紅葉や、雪のニューヨークは、庶民の哀歓を奏でる最高の舞台のように思える。
悔恨に満ちた苦い物語はハッピーエンドとは無縁だ。
明確な言葉にし難い、それぞれのナラティブは予定調和的に完結することがない。
深い余韻をひいて、やがて沈潜する。
完全に分節化できない、結論のない感情がスケッチ風の作品になったといえる。

ハードボイルドでかわいた文体がレイモンド・チャンドラーを思い起こさせる。
たった数ページのなかに流れた時は重い。
人生は短く、ボタンの掛け違いの連続だ。
時間というものを強く意識させるスタイルだ。

時間よおまえはここに残り
去ってゆくのは私の方なのだ


こんな詩の一節が脳裏を過る。

別れた男女が、長い年月を経て再会する。
成熟は過ぎ去った年月の対価であり、その残酷さに匹敵する。
ドラマはそこに生まれる。
リハーサルのきかないドラマが。



※ ニューヨーク・スケッチブック  ピート・ハミル 著  河出文庫(’86.4)

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