継続は力なり

と、タイトルに書くと、いかにも偉そうだけれど、継続とは、同時に惰性にも偏執にもなり兼ねない。
昨年の後半5ヶ月と今年はじめの2ヶ月、リハビリ入院した。

リハビリ病棟は口の字型に病室が並んでいて、中央はナースステーションや浴室やトイレ、洗濯室、治療室などの機能が集まっていた。
その口の字の廊下を歩行練習のつもりでどれだけ回ったことだろうか。
クリーニング担当の施設課の若い女性から
「欲かくんじゃないよ!」
と、出会いがしらに声をかけられた。
彼女は最初の入院の時は、看護助手をしていたのだが、2度目に入院してみると、廊下をモップ掛けする姿が見かけられた。
何か言うと、こちらの目をじっと見つめて、患者の要求を聞き取ろうとする姿勢に胸打たれた。
何と熱心な人か、と感心していたのだけれど、聞くと、難聴なのだという。
結局、助手さんは無理、と言われてこの仕事についたのだと悲しそうに語った。

私は、彼女の「欲かくんじゃないよ」という言葉が身に染みた。
人それぞれ、人生観を語るシンプルな台詞を持っているものだ。
医師や看護師、PTの言葉以上に、それは雄弁だった。

リハビリは一生懸命すべきものだけれど、得てして度を越しがちだ。
本人は、よくなりたい一心で、自分の行動に邁進している。
しかしそれはまた、「欲」という、行き過ぎの心でもある・・・

時に諦め、時にスピードダウンする。
あと一歩のところで登頂を断念するクライマーのように、逸る気持ちや焦りを抑えることのほうが、はるかに難しい。
亡くなった主治医の言葉を思い出した。

〇〇さん、ゆっくり歩けばいいんだよ、と。

人工股関節の動きが脳にフィードバックされて、新たな歩行を獲得するまで、倦まず弛まず地味な!リハビリを続けていこう。


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フィリップ・マーロウの教える生き方  レイモンド・チャンドラー著
                   マーティン・アッシャー編
                   村上春樹訳   早川書房(’18.3)
私は、村上春樹派ではないのだけれど、「ロング・グッドバイ」を読んで、新しいだけあって清水俊二訳より良いと感じたことがあった。
本書は、気障で皮肉のきいたマーロウの台詞を長篇短篇から抜粋、編集されている。
編集は村上春樹が個人的にも親しくしているというアメリカの編集者。
「高い窓」「プレイバック」からの引用がないのに気づいた村上春樹が、その二作からの名文句をつけ加えた。
レイモンド・チャンドラーの作品への呼び水を期待しての出版だと思うが、コンテキストを離れた台詞は、意味不明のものもあって一冊の書物としては物足りない。

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