カササギ殺人事件


悲しいニュース、不如意な日常、…
鬱々と楽しめない日には、ついミステリに逃避したくなる。
書かれていることは、罪と罰にかかわることなのに、それが架空の物語となると俄然”癒し”の効果を発揮するのは何故だろう。ミステリの「謎」だ。
内容が殺人事件であるのはミステリ共通のものなのに、何故かその内容が意に添わないとか、友人が置いて行った本。
数々の賞をとり、2019年には翻訳部門で本屋大賞を受賞している。
シャーロキアンのその友人はイギリス好きであり、本書にはもっと異なった文学的趣向を求めていたのかもしれない。
私自身もシャーロック・ホームズやポアロ、ミス・マープルなどテレビドラマになったシリーズを観ていて、ストーリー以外の細部に心奪われることがよくある。
ポアロはファッション、ホームズは馬車・・・etc.
紳士服の仕立てに感心させられるのはイギリスゆえだ。
私個人としては、古畑任三郎が着こなす(というより田村正和が日常でも愛用しているという)ジョルジオ・アルマーニも大好きなのだが・・・
さて、そこで「カササギ殺人事件」である。
メタノベルの形式の、入れ子の内容が上下に分冊されるという凝ったつくりだ。
著者のアンソニー・ホロヴィッツは、テレビドラマのポアロやホームズ、「バーナビー警部」や「刑事フォイル」に脚本家として参加しているので、知る人も多いだろう。
本作の構想に15年かけたという。
多数の登場人物のすべてに犯行の動機がありそうだ。
どんでん返しは、最も疑わしくない人物による犯行となれば、効果は絶大だ。
そんなところにミステリの持つ魅力がある。
一見平安に流れる日常に走る亀裂・・・
また、アガサ・クリスティへのオマージュが多数隠されているということで、それを見つける楽しみもあるだろう。
マニアックなミステリ・ファンでない私は、トリックの穴もあまり気にならない方だ。
興味の対象は、あくまで人間存在の「不思議」なのだから・・・
※ カササギ殺人事件 アンソニー・ホロヴィッツ著 創元推理文庫(’18.9)

最近、ピンクという色を再発見したようです。
友人から退院祝いだといって、ピンクの花のアレンジを贈られました。
心機一転、年度始まりの日記帳もピンクにしてみました。
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