さよならの儀式

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何度足を運んだことだろう。
こと美容室と歯科医院には浮気をしない質だ。
多分300回近く、このドアを開け、店長の笑顔に出会った。

当初はシャンプー専門の女性がいて、予約もとりにくかった。
男性二人が、それぞれの顧客相手におしゃべりしながら、マイペースでつかず離れず、仕事をしていたこともあった。
美容師はいつか自分の城、イメージを実現したいものらしい。
そのうちにパートナーの一人は隣駅で開店したと聞いた。

店長は前の営業形態が気に入っていたようで、当座は少し寂しそうだった。
そうして何年かが過ぎ去った。
私は、他の美容室に行くことなど露ほども考えず、引っ越した後も、実家に帰る度にカットしてもらっていた。

ヘア・マニキュアをする時は、「今度はどうする?」
「少しオレンジを多めに入れてみようか」
イエローとオレンジを、季節による服装や光の加減で変えた。
髪質や生え方の特徴
左サイドは伸びてくると跳ねやすく、右サイドはおとなしく顔のラインに沿ってくれた。
くせのない直毛だったので、それ以外は問題なかった。

それが12月30日についに店を閉じるという。
私の髪にも白髪が増え、その部分はメッシュ状に色が入るので、光が当たるとオレンジ色がきらきらと輝いた。
「きれいに入ったよ」
店長は大きな円い鏡を持ってくる。
合わせ鏡が、襟足の微妙な長さを映し出す映し出す。

この店での最後のヘア・マニキュアとカットが終了した。
店を開いた33年前、店長は28歳だったという。
全くの、ぺいぺいでね、という。
その頃を懐かしげに振り返る。
休んだのはたった一日きりだと語る言葉が誇らしげに響いた。

最後に「美を届ける仕事だから…」
と、還暦を過ぎて閉店することを考えていたらしい。
コロナが背中を押したのは確かだ。


※ 冒頭の写真は長年通った美容室。
  中央のパネルはずっと飾られていた。
  ゆるく髪を編んだ女性の後ろ姿。
  「想像力をかきたてるでしょ」と。


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12月23日 前の家の時からお世話になっていた植木屋さんも廃業してしまったので
隣家に入っている造園業者にお願いすることになった。
思い切りよく剪定して、山中か或いはまた廃園の趣?があった庭もさっぱりと冬枯れの風情…

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