旧門司港ホテルにて

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港の見えるホテルというと、ホテル・ニューハコダテを思い出す。
銀行の建物をリノベーションしたもので、好きなホテルだったが、残念なことにだいぶ前に廃業してしまった。
(と思っていたら、こちらも2017年にホテルとして再オープンしたそうです)
門司港ホテルの方は売買収の結果、プレミアホテル門司港として健在である。

建築の詩人といわれるアルド・ロッシの遺作とされる。
(彼は交通事故死している)
内装は内田繁。
窓枠や鎧戸、壁に取り付けられたキャビネットの色づかいが懐かしく、素敵だ。
関門海峡に面した窓の下に棚のようにテーブルが作りつけられており、椅子が二つ、窓に向かって並んでいた。
グラスとティーカップを収納した小さなキャビネットは壁にぽつんと配置され、鎧戸と同じグリーンに塗られている。

ホテルは、はね橋を渡った対面の、黒川紀章設計によるタワーマンションの最上階から見下ろすと、まさに大海を悠然と泳ぐ鮫の雄姿にうつる。
本州との結節点である海峡に面した町である。
この町を歩きながら、建築家は構想を練ったという。
都市と構造物の関係を「都市の記憶」として夢想した彼は、「たまたま建築家になった詩人」とも評された。
詩人で建築家というと立原道造や渡辺武信が思い起こされるが
都市そのものが詩的な喚起力をともなって見えてくるのがアルド・ロッシの作品の魅力だろう。

このホテルだったら、居ながらにして海峡の歴史を遡上し、物語の世界に参入できるだろう。
そして、いつしか、窓という装置の意味について考えさせ
俗人を一刻だけでも詩人にしてくれるような気がした。




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                                        ’19.6.11










                                          つづく

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