壇ノ浦拾遺

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赤間神宮にて
三種の神器の宝剣と玉を掴み、安徳帝を乗せた龍神がまさに竜宮城へ降ろうとしている。
水天門のわきに掲げられた大絵馬の図である。
日を受けてきらめく関門海峡を一望する高台に、陰鬱な平曲のメロディーは似合わない。

ラフカディオ・ハーンがリライトした「怪談」の耳なし芳一は、御殿の大広間で貴人たちを前に平家物語をかたっている。
実は、阿弥陀寺の墓地で、平家の怨霊が跳梁する中、夢中になって琵琶をかきならしていたのである。
阿弥陀寺こそ、この赤間神宮であり、もとは貞観元年(859)に宇佐八幡宮を勧請して創建された寺であった。
八幡神は、神仏習合では国家鎮護・仏教守護の神として「八幡大菩薩」と呼ばれ、本地垂迹説によれば、その本地は阿弥陀如来である。

境内にはちゃんと八幡宮も鎮座している。
武人の守護神、特に清和源氏は氏神として八幡神の尊崇あつかった。
足利尊氏もまた安徳帝御廟に参拝した折、拝殿に続く階の下、薄墨の松の前で

いづくより名をあらはさむ薄墨の松もる月の門司の夕暮

と、詠じている。

九条兼実の「玉葉」には、平家一門が壇ノ浦に沈んだ数ヵ月後に大地震が起こったこと、後白河法皇が病気になり翌年崩御したことが記されている。
平家の怨霊が祟りをなすのだと中世人は考えた。
そこで、後白河法皇の快癒を祈って、崇徳院と安徳帝の菩提を弔う堂宇が建てられたのであった。
阿弥陀寺は、中世の御霊信仰からくる霊鎮めの寺になった。
その頃すでに壇ノ浦周辺には、琵琶を弾きながら土地の民間信仰に従事する琵琶法師たちが住んでいたということだ。
彼らが、怨霊鎮めの語りを行っていて、それが平曲の流布につながったとも推察される。

平曲全200曲を語れるのは現在ほんの数人に過ぎないという。
テキストは文語であっても語り物なので、岩波の新日本古典文学大系でも新潮日本古典集成でも、豊富な脚注をたよりにすらすらと調べよく読むことができる。

今年は大河ドラマの影響で、壇ノ浦も観光で賑わうことだろう。




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以下、唐戸市場
場内2階の回転ずしがおすすめです。

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右手、巌流島 唐戸桟橋より


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関門橋 唐戸桟橋より


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日清講和記念館 手前は安徳天皇陵


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左手、春帆楼 日清戦争の講和会議が開かれ、下関条約が調印された。
伊藤博文によってフグ料理「公許第1号」となった料亭
手前に日清講和記念館
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日清講和記念館
講和会議が下関で開かれたのは日本の軍事力を誇示するためだったという。
狭い海峡を日本の軍船が大陸に向けて航行する風景が清国使節団を威圧したことだろう。

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春帆楼で開かれた日清講和会議の舞台が復元されている


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右、旧秋田商会ビル
左、下関南部(なべ)町郵便局 下関で最も古い西洋建築。全国で最も古い現役の郵便局舎。
建築当初の面影を残す中庭とギャラリーがあるそうだ。
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旧秋田商会ビル 大正4(1915)年竣工。
海運会社秋田商会の事務所兼住居だった。
日露戦争末期に創立され、海外進出の機運に乗って発展した。
屋上には日本庭園と茶室がある。塔屋は灯台の役割を果たしていたという。
現在は下関観光情報センターになっている。
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金子みすゞ詩碑
金子みすゞは下関において26歳の若さで没している。
旧秋田商会ビルから唐戸市場にかけての1.6㎞に10の詩碑が建ち
「金子みすゞ詩の小径」として整備されている。
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秋田商会内部 1階純洋風の事務所


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秋田商会2階書院造住宅


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                                       ’11.12.21



                                          つづく

この記事へのコメント

2012年01月14日 14:00
こんにちは。
壇ノ浦紀行、興味尽きません。
背景に、勇壮にして哀感きわまりない琵琶の音が流れていて・・・。
  ≪夏草や兵どもが夢の跡≫
2012年01月16日 14:02
今日は。
赤間神宮と阿弥陀寺の関係・・そうだったんですか。
安徳帝を葬った場所だったので、天皇の御陵としては仏式では困りますものね。お上は強し(笑)
春帆楼 日清講和記念館 坂道を下ってきた記憶が。
唐戸市場・・広いですこと。
昨日下関のこの近くの方と、偶然ご一緒させて
いただきました。
お魚が美味しいと・・ふぐの調理の免許をもたれる方が
多いので、調理は自宅でされるそうです。
ふぐは鮮度が勝負だとか・・お刺身はあんなに薄く造らないで・・やはり分厚いのが美味しいですよと。
そりゃ・・地元の特権ですもの(笑)
2012年01月16日 18:54
minocさん、ありがとうございます。
実際の平曲は、全曲語るのに何日もかかるような、恐ろしいほど冗漫なもののようです。
空はもっぱらテキストを音読し、脳を活性化しつつ、無常感と亡びの美?に酔いしれています。
2012年01月16日 19:02
やろいさん、ありがとうございます。
八幡神が源氏の氏神であることと、赤間神宮が御霊神社であることも、つじつまが合いますね。
ふぐのお刺身はやはり厚切りが美味しいのですね。
絶対!そうだと思いましたよ。

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